記念講演 ~勝ち続ける組織の造り方~ 講師:青森山田高等学校 サッカー部監督 黒田 剛氏

広報及び業務充実委員会委員長 古川 直磨

  臨時総会での記念講演は、青森山田高校のサッカー部総監督の黒田さんから頂いた。講演は、VTRの放映から始まったが、実はこの時、正直な話、今日の講演はあまり期待できないな、と感じた。しかし、VTR終了後、アナウンサーの境香織さんと対談形式での講演が始まると、どんどん引き込まれていった。おそらく、この形式での講演は数をこなしているんだろうな、と思わせる内容で、様々なことに考えを巡らせられる講演であった。

  対談のテーマは色々あったが、その中で私が巡らせたものについて、以下、書いてみたいと思う。

【高校のトップチームを頂点としたピラミッドを築く】
  組織というのは、大きくなればなるほど、トップの意向、考え方、方針が行き渡らなくなるケースが多い。トップの方針が行き渡らなければ、組織はあらぬ方向へ進んでいく。どうやってトップの方針を行き渡らせるか、この点を考えさせてくれたのが、このテーマである。
 まず青森山田のサッカー部は、高校のトップチームを頂点として、中学・高校合わせて約300名がクラス別にチームを構成し、それらがピラミッドを形成している、ということであった。クラス別のチームの人数など詳細にまでは話は及ばなかったが、黒田講師を含めて11名のコーチで見ている、とのことだったので、1チームあたり25~30名程度であろう。1人の人間が300名に方針を浸透させることができるかと言えば、おそらく無理だ。伝えることは出来ても、浸透させるまではできない。浸透させるには、口頭で何度か伝え、また一緒に行動する中でも伝えることで、やっと浸透する。300名に何度も口頭で伝える、一緒に行動する中で伝える、それは実際には出来ない。
 そこで、黒田講師は、クラス別にチームを分け、それぞれを自分の方針を理解しているコーチに指導してもらっている。25~30名であれば1人のコーチが練習をする中で、また、練習以外の場面でも、共に過ごす中で少しずつ浸透させることが出来るはずである。もしかすると、この人数でも多いかもしれず、そう考えると、コーチの下にチームのキャプテンがいて、そこからも浸透させているのかもしれない。いずれにしても、方針を浸透させる、という点が非常に重要である。
 そんなことは組織作りにおいては、当然のことじゃん、と思われる方が多いと思う。私自身も、経営学の組織論なんかで勉強したような気がする。ただ、この話を知識として知っているのと、実践できることは全く別物だ。私自身、とある団体の活動において、中間管理職として、上の方針を下に浸透させなければならないのだが、なかなか出来ずに、本当に苦労している。口頭で伝える、共に行動する中で伝える、そんなことはやっている。でも出来ない。そんな想いを抱えていただけに、黒田講師の話には引き込まれた。
 想像するに、黒田講師の凄さは、10名のコーチに自分の方針を浸透させるだけでなく、どうすれば方針を行き渡らせられるかを伝授できた点にあると思う。自分が浸透させて終わり、ではなく、その先まで想定し、他のコーチに対して伝え方まで浸透させていた点に凄さがあると感じた。
【練習だけが試合の場で信じられるもの】
  これは色んな場面で聞く言葉かもしれないが、沁みた。ゴルフでも・・・、いや、これはロクに練習をしていない私が言ってはいけない言葉だった。まぁ、いずれにしても、何度も繰り返して体に染み込ませたことだけが、大事な場面で実践することが出来るし、何より、あれだけやってきたんだ、という自信が安心感を与えてくれる。
 何度もやって体に染み込ませるというのは、生きる上でも大事なことだと思う。私自身、監査法人にいるときは話す、特に人前で話すことは苦手だったし、出来るだけ、そういうことをしなくても済むように逃げていた。しかし、独立した後ではそんなことは言っていられず、研修講師の依頼を頂いて、「私、そういうの苦手なので。」と断ってしまうと、そこで終了。稼ぎに繋がらない。いや、当初は稼ぎなどとプラスを積み上げるような話ではなく、何とか食っていく、マイナスをゼロに戻すために受けていた。ある意味、やらざるを得ない状況で受けていた。そんなスタートであっても積み重ねれば、積み重ねがその通り出てくれる。大勢を前に、早く話すことも出来れば、ゆっくり話すこともできるようになった(と感じている。)。中高のスポーツは、やはり教育という一面もある。その中で、黒田講師は、練習だけが信じられる、積み重ねてきたことだけが自分の拠り所となる、と教えられているんだなと感じた訳である。沁みた。
【努力を向ける方向を間違えるな】
 会員から寄せられた質問で、「レギュラー11人を選出するときの基準は?」から派生して、「一生懸命、努力するけど結果が出ない。一方で、努力はしないけどセンスが良くて結果を出せる子。どちらを取るか。」という話があった。これも、「うーん、そうかぁ。」と唸ってしまった。自分自身、生まれてこの方、センス、というものには縁のない人生であった。センスの良い周囲から、いつも遅れを取っていたと思うし、今もそうなんだと思う。そして、センスの良さというのは伸ばせないんだなー、とも感じている。ただ、黒田講師から、努力を向ける方向を間違えるな、と言われたときに、少しだけでも自分を客観的に見ることが出来れば、もしかしたら、それはセンスの良さに繋がるかも、と淡い期待を抱いたのである。
 講演スタート時点では期待できなかったが、すぐに引き込まれ、話の内容から色んなことを考えさせられた、非常に良い講演だった。これだけでも青森まで来た甲斐があったと感じた。
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